まずは妊娠、おめでとうございます!
これから約40週弱という長い期間、仕事をしながら妊娠生活を無事送ることができるのか、不安な方もいらっしゃると思います。
カナダ(ケベック州)の素晴らしいところは、妊婦や胎児に悪影響と見なされる職業の場合、妊娠が確認でき、政府機関であるCNESSTの審査が通ったところから、お給料をもらいながらお仕事を休む(preventative leave)ことができるなんて制度があること!
「えっ?!どういうこと??」と思われる方も多いと思います。
日本では、どんなに辛くても仕事に行くのが当たり前ですもんね。
では、どんな仕事に就いている方が該当するのか等、この制度について詳しく解説していきます。
CNESSTって何?
制度についてご説明する前に、まずはCNESSTとは何かについて話していきたいと思います。CNESST(旧CSST)は、Commission des normes, de l’équité, de la santé et de la sécurité du travail の略で、労働における安全衛生委員会です。日本では、安全保障員会は厚生労働省の管轄となります。CNESSTは、ケベック州政府が労働者の権利と義務の促進を委託した団体であり、ケベックの労働者と雇用者への敬意を保証します。
公正でバランスの取れた労働条件の促進、賃金衡平の実施と維持を保証、職場の安全衛生を担当し、労働災害の被害者の補償やリハビリの確保等を行っています。
どんな仕事に就いているとこの制度が利用できるの?
妊婦や胎児に悪影響を及ぼすと考えられる薬品・物質を使用している、立ち仕事である、階段の上り下りを頻繁にする、重い荷物を持つ、夜勤のあるシフトで勤務をしている等の場合はこの制度を利用できる可能性が高いです。
妊娠していることが確認できると、医師からどのような仕事をしているか尋ねられます。もし仕事柄、妊婦の状態で働き続けられるか心配であれば、職業名とともに、仕事の詳細を伝えるようにしましょう。
尚、立ち仕事と言えば、レストラン業や接客業も該当しますが、これらの場合は妊娠発覚すぐではなく妊娠6ヶ月頃に承認が下りるケースがほとんどです。
どうやって申請するの?
申請は担当の産婦人科医を通して行うこととなります。
仕事があなたの健康またはあなたの胎児に危険を及ぼすかもしれないと心配される場合は、担当の産婦人科医に相談してください。その際、職務内容(作業、動き、姿勢、取り扱い製品(あれば)等)を詳しく説明しましょう。同じ仕事をしていても、医師によってすぐに休むよう指示される方とそうでない方がいます。また、妊婦の体調によってもレターを書いてくれる時期が異なる場合があります。ご自身の体調を見ながら、その都度医師としっかりコミュニケーションを取っていきましょう。
申請の流れを教えて!
ステップ1:
母体もしくは胎児に仕事が悪影響だと産婦人科医が判断した場合、「Preventive Withdrawal and Reassignment Certificate for a Pregnant or Breast-feeding Worker」の用紙に医師と妊婦の両方が記入をし、医師がCNESSTへ書類を送ります。
ステップ2:
書類を受信したCNESSTは、妊婦と企業の両方に状況確認のための電話を入れます。
ステップ3:
CNESSTで審査が行われ、結果が医師のもとへ送られます。
医師から結果を取りに来るよう妊婦の元へ電話が入るので、すぐに取りに行くようにしましょう。
CNESSTからの電話ではどんなことが聞かれるの?
私のところへは、CNESSTと業務委託をしている医師から電話がありました。
まず、名前と妊娠していること、そして申請したことの確認があった後に、仕事内容について詳しく聞かれました。ポジション、仕事内容、勤務時間、休憩時間、勤務中の姿勢(座りっぱなしなのか立ちっぱなしなのか含む)、重い荷物を持つか、階段の上り下りを頻繁にするか、仕事で車の運転をするか等の質問がありました。
私は体調も良くなかったので、そのことも併せて伝えました。
申請から結果が出るまで、どのくらいかかるの?
通常、2週間以内には結果が出ます。
申請してからけっこうすぐ状況確認の電話がかかってきたので、上にもコメントしましたが、申請をしたらすぐに会社へ妊娠した旨とCNESSTから確認の連絡が入る旨、伝えましょう。
結果にはどのような内容が記載されているの?
職業等にもよると思いますので一概には言えませんが、私の場合は、
♦就業時間の制限(給与はフルタイム時と同額支払い)
♦他ポジションでの勤務が可能な場合はそちらへ移動(給与は現在のポジションより低い場合は現在と同額支払い、給与が上がる場合はその給与額へ変更)
♦産休・育休から復帰の際は同ポジションへ復帰、もしくは他のポジションでも給与額は現在と同額もしくはそれ以上支払うこと
♦決定は本日中に行い、即日有効とする
もっと項目も多く書かれていましたが、まとめるとこんな感じでした。基本的にはどこの企業も数時間しか働かないのにフルタイムのお給料を支払い続けることを了承しないかと思いますので、ほとんどの場合がレターを受理した日が仕事の最終日となるかと思います。

早期離職となった場合、手当となるお金はどのくらいもらえるの?
離職後5営業日は、企業から100%の給与(手取り/net salary)が支払われます。
その後10営業日は、企業から90%の給与(手取り/net salary)が支払われます。
その後は、CNESSTが90%の給与(手取り/net salary)を企業へ支払う形となりますが、申請者である妊婦へ企業が90%の給与(手取り/net salary)を35週6日まで支払います。
早期離職した際はグループインシュランスはどうなるの?
会社でグループインシュランスに加入されている場合、育休から復帰するまで保険の加入を続けたいか、お休みをしている間は未加入としてほしいかを選択できます。グループインシュランスがあれば、有料の超音波検査や血液検査等、80%くらいカバーされますので、小切手や振り込みで会社に保険料を支払う形で加入を継続させてもらうことをお勧めします。
まとめ
カナダ(ケベック州)では、妊婦や胎児に悪影響を及ぼす職業の場合は、手取りの90~100%を妊娠36週前まで受給しながらお休みをすることができるという素晴らしい制度があります。もしご自身の職業が該当すると思われる場合は、必ず担当医にその旨をしっかり伝えるようにしましょう。
医師によって、積極的にお休みをさせる方もいれば、同じ職業でもお休みを特に勧めてこない先生もいらっしゃいます。
該当職種だけれど医師がpreventative leaveの話をしてこない、けれども体調が優れない等あれば、自分から積極的に仕事を続けていくことが厳しく、お休みを取りたい旨、医師に伝えるようにしてみると良いかと思います。
突然空きポジションが出ることになるので企業にとっては痛手ですが、一番大事なのは妊婦と胎児の安全です。また、そのことはカナダで働く方々は皆わかっています。妊娠期間中、仕事を続けていけそうにないと思えば、医師に相談するようにしましょう。
また、このCNESSTの制度は、あくまで仕事が害をもたらす場合にのみ適用されます。体調不良や切迫早産/流産の恐れがある等で仕事をお休みしなければならない場合は、グループインシュランスのshort/long term disabilityを利用するか、そちらがない場合はカナダ政府のEmployment Insurance(EI)の申請をするようにしましょう。但し、EIは最長15週となりますので、それ以上の休みとなる場合は、早い段階から産休に入ることとなるかもしれません。